衛星高度と可視範囲のグラフ


SpaceXが4425基の通信人工衛星を打ち上げる計画をアメリカの連邦通信委員会に提出したというのがニュースになった。前からちょいちょい噂にはなっていた話だが、少しづつ動きが出てきているみたい。

SpaceX、通信衛星4425基で作る全世界インターネット網実現に向け許可申請。第1段階は800基を打ち上げ予定

この衛星インターネット用の衛星網、高度1150km、重量400kg弱の構成。一番最初の噂だともう少し小さな衛星でもう少し低い高度だろうと考えられていたのにちょっと違っている。

なんでかなぁーとぼんやり考えていたけど、衛星の数と可視範囲は大事な話だろうと、少し自分なりにまとめてみた。

(ロケット用フライトシミュレータであるOpenTsiolkovskyの改修の一部として実装したもののおまけ機能を使っている)

衛星高度と可視範囲

地上に観測者(地上局のイメージ)を置いて、衛星(ロケットなどでも良い)がある高度にあるときに観測者からどの仰角で見えるかを計算してグラフ化。

仰角0度以下では見えないということになる。

また、実際の観測も仰角があまりに低いと大気に遮られて見えないようだ。建物や山などで仰角が高い時のための角度もプロットしている。

試しに、ISSの高度(400km)とSpaceXの衛星インターネット計画の高度に青い点線を引いている。

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SpaceX衛星インターネット

SpaceXの計画だと仰角40度ほどを通信可能範囲のように記述している画像が出て来るが、たしかに高度1150kmの衛星の仰角45度の可視範囲は800〜900km程度。

範囲を円にしてみると下記のようになる。たしかにこれは地球の一部しか見えていない。ブロードバンドで一つの地域を複数衛星でカバーしようとして衛星数が増えてしまうのもうなずける。

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ISS

ISSの可視範囲も試しにプロットしてみる。水平線ギリギリに見えるとして、仰角3度のISS(高度400km)の可視範囲は1800km程度になり、マップで見ると赤い円のようになる。ISSは90分に1度地球を回っているしこの円の範囲に入ることが多いのがわかる。

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余談

本当は仕事としては、ロケット飛翔時の可視範囲と無線通信のための数字を計算するためにやっていた。ロケットが大気圏を出て水平方向に加速していくときにどこまで無線通信できるか、結構重要で、計算してた。

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グラフ作った際のコードはGistで公開している。Python2.7

過冷却液体酸素の密度の話


ロケットにおいて、推進剤の高密度化は極めて重要な開発要素。

特に固体ロケットなんかでは推進剤の粒径がどうだの、最密充填がどうだのっていうのはよく聞く話。能力に直結する大事なもの。

液体ロケットの場合でも過冷却液体酸素を使うことにより推進剤の高密度化で、構造重量を削減し、ロケットの能力を上げようというロケットがある。

SpaceXのFalcon9で採用されている技術だが、ネット上に定量的にどのぐらい効果があるのか出てきてなかったので、計算ツールを使って出してみた。

Falcon9がお客さんの荷物を減らさずに再使用のため着陸できるようになったのは、この過冷却のお陰だろう。能力が上がったで着陸に推進剤を残すことが出来るようになったはず。

温度が違うと様々な特性が変わってしまって開発要素は増えるし運用生も悪くなる、それでも液体酸素(LOX)の密度がこれだけ劇的に変わって魅力的。

Falcon9の場合、大気圧化(0.1MPa)の沸点は-183℃(90K)だが、Supercooled LOXとかSubcooled oxigenとか表記される過冷却液体酸素では-207℃(66K)程度で使用されているようだ。(ソースによって温度が微妙に違うので”程度”)

この場合、グラフから見て取れるように、液体酸素の密度は1割弱増している。

極低温流体は温度によって密度が大きく変わるのはよく知られているが、可視化してみると面白い。

(グラフの見方としては、非連続で大きく変わっているところが液体ー気体の境目です。)

(ちなみに、計算ツールの中身まで見てないので、このグラフはあくまで”参考”程度の信用度です。)

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宇宙活動法の制定に伴う殴り書き


宇宙関連2法が参院本会議で可決・成立 | NHKニュース 

NHKの報道に取材を受けました。コメント載ってます。

取材では30分ぐらい話したけどほぼカットされているので、もう少し追加。
コメントでは「待ち望んでいた」と取材側の意図ピッタリのところだけ抜き取られているけど、宇宙活動法自体は規制のための法律なので、可能なら無しがいい。

「規制はあるより無いほうがいい」っていう事業者として当たり前のこと。
「おめでとう!」って声かけられるけど、そんなにうれしいものではない・・・

それでもなぜ必要で、待っていたか?国際法の枠組みではロケットが他国に落ちて損害賠償の話しになったときに打上げた主体のいる国が補償しなさい(誰が打上げようと構わず)ということになっている。知らんやつが勝手に打上げて補償の問題になると国が困るから法律が必要。
ケツ持ちするから、審査させろっていうのが向こうの理論。

これまではJAXA法の中だけだったけど、民間事業者が出てきたから制定。
アメリカでは同様の法律が1984年にはできていたので、30年遅れている。
それぐらい民間事業者が出てこなかったのも問題だし、現行法でなんとかしようって工夫でやり過ごしてきたっていう経緯もある。

法律があると良いことは、対外的な説明の際にコンプライアンスとか作業の段取りの説明・見通しがつくところ。
うちは別としても、普通の民間事業者はコンプライアンスとか事業リスクとか真面目に書き出すときに法律の有無は重要なので、宇宙活動法があると他にも事業者が出てくるかもなぁというところ。
国内でも基幹ロケットではない、新しいロケットを作る会社が出てくるって予想している。っていうか聞いてる。

その良いところ以外は正直「ちっ、めんどくせーな」という気持ち。企業の「ちっ、めんどくせーな」って最低でも数百万数千万円の必要経費というか投資になってしまう。無いほうがいいに決まっている。

 

〇な点

・無人サブオービタル飛行(弾道飛行:人工衛星にならないやつ)は法律の範囲外になったこと
民間事業者もペンシルロケットとかの流れと同様に開発のステージを踏むことになる。
人工衛星の前のサブオービタルは規制の範囲外にすることによって、サブオービタルの開発段階のようなデスバレー入口のところでのハードルは無くしてくれている。
これはグッジョブ。アメリカより産業のことを考えていて進歩的。
他の国の状況とかを見るに、近い将来学生ロケット大学ロケットとかも大幅に進化するポテンシャルはあって、これが規制に入らないことによって、大学ロケットの人材育成の可能性も見えてくる。
まぁ、本当のデスバレーの一番深いところでこの宇宙活動法っていう規制があるんだけど・・・

 

不安な点

許認可制のため、審査があるが、誰がどのように審査するのか決まっていない。これから運用方法が決まる。
そもそも国の審査っていうことを信用も信頼もしていないので、不安。
M-02Jという飛行機の国交省航空局へ許認可に際して仕事としてお手伝いした際に、嫌な目にあった。
飛行機と同じようなあんな審査体制な場合、ロケット打ち上げのハードルはかなりあがる。
</s>まず、工学をわかっているやつを出せ。<s>
背広の方々の話では、飛行機みたいにはならないとの説明だが、運用がまだのため不安。

無いとは言われているが、JAXAのロケットと同等程度審査をしたら、民間事業者のロケットは絶対に上がらない。
基準がアポロのとき(1960年代)の延長で、無駄に厳しいし、そもそもの無駄もあるみたい。
現在のところの方針として安全以外のミッション成功などの部分は審査無しと聞いているが、どうなるか注視。

 

△な点

アメリカの同等の法律であるCommercial Space Launch Actでもそうだが、民間の事業ステージ(開発ステージ)があがると法律も改正される。
この宇宙活動法はまだまだ視座が低い。目の前の事業に向けて書かれている。
もっと将来の宇宙開発のこととか心の準備ぐらいしててもらうといいのになぁと思っている。

 

まとめ

アメリカの例を上げると、民間ロケット会社は山ほど出来て、山ほど潰れていってる。
(会社は潰れてるっていっても、中身の人は色々と移動しているって話しだけど。)
基礎の基礎の法律が出来たからって「よし、これで産業応援したしオッケー」と終わりにしないで貰いたい。
アメリカでも政策があってようやく民間の台頭の時代が来ているって認識は色んな人と共有しておきたい。

 

以上、一般の人向けなのか、業界の人向けなのか微妙なところの深夜の殴り書き。

衛星打上げロケットSS-520 4号機の予測(妄想)


JAXA(ISAS)の観測ロケットであるSS-520の4号機が衛星打ち上げロケットになりそうだということが文科省のサイトから判明したことで、一部界隈では非常に盛り上がっている。

固体燃料ロケットは専門外ながら公開情報だけからスペックや軌道の予測をしてみる。

※注意;完全な妄想のスペックなので全然違う可能性がある。2016年6月11日現在詳細なスペックが公開されていないが、今後スペックのわかる資料が出てくる可能性がある。

読み解く資料

宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第18回) 配付資料

JAXA観測ロケット

Wikpedia:S-520

Wikpedia:SS-520

Togetter:SS-520改良ロケットでの超小型衛星打ち上げについて

解析ツール

使うツールはOpenTsiolkovsky 。使い方は↓のリンクを参考。

北朝鮮の衛星打ち上げロケット(通称:ジジツジョウノミサイル)のスペック予想から軌道を作ってみる

結果はOpenTsiokovskyの最新のリポジトリのOpenTsiolkovsky/misc/sample/SS-520-4 というフォルダに入れてある。

解析(妄想とも言う)

これを参考に下記のように考えてみた。

  • 推進剤(資料より確定):1段 1587kg、2段 325kg、3段 78kg
  • 燃焼時間(資料より確定):1段 31.7秒、2段 24.4秒、3段 25.6秒
  • 比推力(S-520のデータより仮定):1〜3段 真空中264.8秒
  • 平均推力(上記データより推定):1段 14トンf、2段 3.5トンf 、3段 0.8トン
  • 推力(軌道計算やIA資料より推定):各段ともに平均の30%から75%程度の変動
  • 初期重量(種々のデータより粗い推定):1段 2.2トン、2段 510kg、3段 86kg
  • 空力データは尾翼の有無で全然違うだろうがM−Vロケットの公開データと同じと仮定
  • 地表に対する姿勢角(軌道計算から推定):1段初期エレベータ角 85度、ラムライン制御以後のエレベータ角 0度 、アジマス角99度

 

軌道計算してみてわかること

1段目⊿V=3.3km/s、2段目⊿V=2.6km/s、3段目⊿V=4.8km/s程度だと想像される。

推力は初期に大きめにかなり大きくして、燃焼終了近くではかなり推力を絞っている。固体燃料ロケットは初期化速度でも10G程度あるが(人が気を失うGが4G 程度と言われている)推進剤が少なくなる燃焼終了時に20G以下ぐらいになる方が良さそうだ。

姿勢制御が1段目燃焼後の時間しか働かない珍しいタイプなので、1段目ロケットは高度を稼ぐため、横速度は稼げない。2段目、3段目は横速度を稼ぐため。と明確に役割が違う。2段目の軌道を可視化すると放物線の頂点付近で横方向に加速する面白い軌道になる。

ラムライン制御によって、2段目燃焼前に機体はほぼ水平になるようにしていると推定できた。

固体燃料ロケットは空気あるところでの速度が随分出ていて、最大抗力は800kgfとかになりそうだ(推定の推定が重なっているので実際の値はかなり上下すると思われる)

衛星の軌道は最低高度(ペリジ)200km、最高高度は3段目の重量や性能によって大きくかわるので、なんとも言えない。工学的に言うと3段目の比推力と空虚重量の感度が高い。軌道投入精度はラムライン制御の静定具合によるが、軌道投入精度は低そう。4号機以降の予定が分からないが、今後の改良によっては軌道によっては6Uぐらいまでペイロードを増やせるかもしれない。ただ、ペリジ200kmと高度の低い衛星は衛星寿命が短いので、3Uぐらいの超小型衛星がユーザーとしても良いのかもしれない。

結果を貼り付けておく。

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ロケット開発徒然(1)


会社でクラウドファウンディングを始めました。

ちょうどいい機会だから、普段思っていてもアウトプットしきれないことを書いておこうブログ。

なぜ「みんなの力(ちから)で」ロケットを打上げなければならないのか。

なつのロケット団、インターステラテクノロジズにとっての単なるロケット打上げって意味以上に大きな社会的な意義があると考えているからです。

一つ目の理由。ロケット=国家。
元々は宇宙旅行したい人たちが理論だったり初めての液体ロケットだったりをDIY的に開発していたのがロケット工学の始まりだけど、アプリケーションとして何に使えるかっていうと戦争の道具につかえてしまった。
ナチスドイツからロンドンを攻撃できたり、核弾頭積めたり、冷静の代理戦争としての宇宙開発が出来たりしてしまった。それが本来の使い方みたいに使われてしまったのがロケット技術。
国家や軍ではないところの需要だけではロケット工学の社会実装は出来なかった。

 

開発や運用に巨額の金額がどうしてもかかってしまう。
学生の頃はなんでそんなに開発に費用がかかるんだって不思議だったが、最近はよくわかる。
お金はある分だけ使わないと開発はできない。
開発費用を削るとしたら、ロケットを安くしようとしたら、どこか抜け道をするしか無い。
よく使われる「抜け道」は、「新規開発はしない」「他の用途で開発したものを転用する」などだ。

 

もう一つ。運賃。
なんで人類がもっと宇宙進出していないのか。
よく言われるのが宇宙まで1kgのものを運ぶ運賃が100万円。地球近くなのか、月なのか、火星なのか、地球近くでもどの高度・軌道なのかで全然違うが、1kgの荷物を運ぶのに超大雑把に100万円かかっている。
地球上だと、物流の発達のおかげで地球の裏側にだって1kg数千円もあれば荷物が運べてしまう。
価格差100倍以上。
だから、ロケット開発をしている人の夢は宇宙への輸送コストを100分の1にすること。
100分の1になると地球上と同じように開発が進むだろうって大真面目に思っている。
人類が宇宙進出の鍵はコスト100分の1だと。

 

運賃問題の解決策として、昔から言われているのが「再利用」。
現在使い捨てのロケットを100回繰り返し使えるようにすれば、コスト100分の1じゃないかと。

 

もういちど頭にもどって、僕らのプロジェクトは、「みんなの力(ちから)で」打上げるロケット。
これは1つ目「ロケット=国家」以外の道があるっていうのを示したいから。

開発費用を削るため・安いロケットを作るための「抜け道」を僕らは「新規開発はしない」でも「他の用途のものを転用する」でもなく、「国家飛ばし」だと考えている。
つまり民間での宇宙開発。
国を通してしまうとなんでもオーバーヘッドが大きすぎる。お金にしても意思決定の時間にしても。
オーバーヘッドの極力少ない開発は民間しかないと考えている。
要するに無駄をなくしましょうってこと。
この成功例は既にアメリカにある。日本はまだ、って言われている。国に頼らないと無理だって声も聞き飽きるぐらいに聞きながら開発してる。
今回のクラウドファウンディングは、民間で、つまり税金以外のお金でやるとオーバーヘッドが少ない開発ができますよっていう社会実験。調達目標金額は2700万円。ロケット開発やっている人ならビックリするぐらい観測ロケット1機あたりの値段として考えると安い。(実は全額ではないんだけど。)
民間でお金も集まり、安く打ち上がるってことが達成できたら、これまで日本で宇宙開発をしていた人たちがひっくり返るぐらいのこと。

 

そういうことを達成したい。

 

工学実験という意味もあるんだけど、そういった社会実験だっていうところ。

 

あ、「他のものを転用」っていうのは採用していて、民生品っていって普通に市場で売っている部品を買ってきて使いましょうっていうのはやってますよ。世間一般的にも自分たち的にも普通すぎてなんとも思わなくなってるけど、宇宙開発関係者の中ではかなり注目すべきトピックスだったりする。

 

もう一つ「運賃」の解決については、眠くなってきたのでまた次回。