JAXA(ISAS)の観測ロケットであるSS-520の4号機が衛星打ち上げロケットになりそうだということが文科省のサイトから判明したことで、一部界隈では非常に盛り上がっている。
固体燃料ロケットは専門外ながら公開情報だけからスペックや軌道の予測をしてみる。
※注意;完全な妄想のスペックなので全然違う可能性がある。2016年6月11日現在詳細なスペックが公開されていないが、今後スペックのわかる資料が出てくる可能性がある。
読み解く資料
Togetter:SS-520改良ロケットでの超小型衛星打ち上げについて
解析ツール
使うツールはOpenTsiolkovsky 。使い方は↓のリンクを参考。
北朝鮮の衛星打ち上げロケット(通称:ジジツジョウノミサイル)のスペック予想から軌道を作ってみる
結果はOpenTsiokovskyの最新のリポジトリのOpenTsiolkovsky/misc/sample/SS-520-4 というフォルダに入れてある。
解析(妄想とも言う)
これを参考に下記のように考えてみた。
- 推進剤(資料より確定):1段 1587kg、2段 325kg、3段 78kg
- 燃焼時間(資料より確定):1段 31.7秒、2段 24.4秒、3段 25.6秒
- 比推力(S-520のデータより仮定):1〜3段 真空中264.8秒
- 平均推力(上記データより推定):1段 14トンf、2段 3.5トンf 、3段 0.8トン
- 推力(軌道計算やIA資料より推定):各段ともに平均の30%から75%程度の変動
- 初期重量(種々のデータより粗い推定):1段 2.2トン、2段 510kg、3段 86kg
- 空力データは尾翼の有無で全然違うだろうがM−Vロケットの公開データと同じと仮定
- 地表に対する姿勢角(軌道計算から推定):1段初期エレベータ角 85度、ラムライン制御以後のエレベータ角 0度 、アジマス角99度
軌道計算してみてわかること
1段目⊿V=3.3km/s、2段目⊿V=2.6km/s、3段目⊿V=4.8km/s程度だと想像される。
推力は初期に大きめにかなり大きくして、燃焼終了近くではかなり推力を絞っている。固体燃料ロケットは初期化速度でも10G程度あるが(人が気を失うGが4G 程度と言われている)推進剤が少なくなる燃焼終了時に20G以下ぐらいになる方が良さそうだ。
姿勢制御が1段目燃焼後の時間しか働かない珍しいタイプなので、1段目ロケットは高度を稼ぐため、横速度は稼げない。2段目、3段目は横速度を稼ぐため。と明確に役割が違う。2段目の軌道を可視化すると放物線の頂点付近で横方向に加速する面白い軌道になる。
ラムライン制御によって、2段目燃焼前に機体はほぼ水平になるようにしていると推定できた。
固体燃料ロケットは空気あるところでの速度が随分出ていて、最大抗力は800kgfとかになりそうだ(推定の推定が重なっているので実際の値はかなり上下すると思われる)
衛星の軌道は最低高度(ペリジ)200km、最高高度は3段目の重量や性能によって大きくかわるので、なんとも言えない。工学的に言うと3段目の比推力と空虚重量の感度が高い。軌道投入精度はラムライン制御の静定具合によるが、軌道投入精度は低そう。4号機以降の予定が分からないが、今後の改良によっては軌道によっては6Uぐらいまでペイロードを増やせるかもしれない。ただ、ペリジ200kmと高度の低い衛星は衛星寿命が短いので、3Uぐらいの超小型衛星がユーザーとしても良いのかもしれない。
結果を貼り付けておく。
ピンバック: Open Tsiolkovskyで空中発射ロケットの打上げ計算 – それでもロケットは回っている