冬季ロケット射場としての北海道大樹町

「寒い時期だとロケット打上げ出来ないでしょう」 「雪が多くて大変でしょう」 何度も何度も言われた。北海道大樹町でロケット打上げをやろうとしているっていう中、いろいろな人に説明してきたけど、ブログに書いておく。   (きちんと対策すれば)大丈夫だと。

気温の比較

海外の寒冷地にあるロケット射場と年間気温の比較をしてみる。
北海道大樹町とアラスカにあるコディアック打上げ基地、スウェーデンのエスレンジの比較
米国アラスカにあるコディアック打上げ基地(今はPacific Spaceport Complex – Alaska (PSCA)と改名済み)とスウェーデンにあるエスレンジを比較している。 コディアックは既に軌道投入するロケットの打上げ実績が複数ある射場で、現在は地元公社が運営しているようだ。アラスカ海流は温かいのかコディアックは冬でもそこまで寒くないことがわかる。 エスレンジはヨーロッパの観測ロケットを数多く上げている射場。毎年数回、多くて10回以上の打上げが行われている。エスレンジ打上げ実績を見ても夏季冬季関係なく打上げを行っている。
北海道大樹町とカザフスタンのバイコヌール宇宙基地、ロシアのプレセツク宇宙基地
カザフスタンのバイコヌール宇宙基地とロシアのプレセツク宇宙基地を比較してみた。 バイコヌールは人類初の人工衛星スプートニク、人類初の有人宇宙飛行を行ったガガーリンを打上げた射場で、現在でもソユーズロケットで宇宙飛行士が宇宙に行くための重要な宇宙基地。真冬でも関係なくバカスカ打ち上げは行われている。 プレセツク宇宙基地はソ連によって長らく秘密にされていた射場で、これまでに1500機以上のロケット打上げが行われていたようだ。多いときでは年間50回以上の打上げがされていた、とんでもない場所。 寒冷地であることはロケット打上げ出来ない理由には全くならないことが分かる。  

晴天率の比較

雪ばっかりのイメージを崩してみる。
晴天率の比較として日照時間を比較
「十勝晴れ」という言葉がある。十勝地方は冬になると晴れている日がとても多い。気温は低いが、ずっと雪が降るということは少ない。一旦積もった雪は融けないけど・・・ 冬場晴れていて乾燥している東京と比較しても冬季の日照時間は同程度。 同じ北海道であっても札幌は雪によって日照時間が少ない。雪が多いイメージの石川県金沢市と比較すると日照時間は倍程度になることもわかる。

対策

寒冷地作業で一番気を使うのは「水が0℃で凍る」こと。消火用に水は使えない。コンプレッサーなどの機械は水抜きをしないとすぐに詰まったり壊れたりする。もちろん屋外の水道なんて使えない。屋内で施行したもので水分を含んでいるものを外に持っていくと中に氷が発生して詰まったり色んなトラブルを起こす。 もう少し高尚な話も付け加えておくと、スペースシャトルのチャレンジャー事故のようにOリングの低温特性のように材料選定時に気温を考えて試験するものはする。モノを動かす・滑らすときに多用するグリスやオイルも低温対応のものを使わないとすぐに固まってしまう。市販のモーターを何も考えずに寒い外で使おうとするとグリスが粘土やワックスぐらいに固まってしまって動かないなんてこともある。

結論

対策さえすれば、寒いところからのロケット打上げ世界中に多くの実績があり可能。日照時間の長い北海道大樹町は良い場所である。 日本人に有名なのが種子島とかアメリカのフロリダのイメージなので寒いのダメなイメージがあるが、寒冷地から打ち上がるロケットも世界的にはとても多い。

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