人力飛行機の翼型の選び方

人力飛行機から完全に引退してるのでウザOBとしてもう少し人力飛行機のTips記事.

そのうちDAEシリーズから完全に脱してもっと良い性能の翼型の人力飛行機ばっかりになったら楽しいだろうなと妄想してる.

人力飛行機の翼型の選び方に関する記事で日本語で使えるものって知ってる限り存在しないので書く.

設計者志望の人の参考程度に.あくまで参考程度に.独学で人からの判断を伺ったこと無いので.

低レイノルズ数での性能

レイノルズ数10^6以上の領域では翼型の性能は変化しにくいが,人力飛行機な領域(低レイノルズ数)の10^5だとレイノルズ数によって翼型の性能が変わってくる.

境界層が層流から乱流に変わるまでに生まれる層流剥離泡(separation bubble)の挙動と遷移点の位置の影響が大きいらしい.

翼型

前の記事で翼型の読み込みのところに具体的な名前を上げたものから選ぶ

  • Daedalus 87/88で使われた現在主流な翼型DAE11,DAE21,DAE31
  • 人力飛行機で使われてたらしいEPPLER 393,EPPLER395,EPPLER396
  • 高速機で使われているFX 76-MP-120,FX 76-MP-140,FX 76-MP-160
  • 比較対象として無尾翼機で使われる反転キャンバー翼MH78
  • 軽飛行機や鳥人間コンテスト滑空機に使われるNACA4412,EPPLER654
  • 下面が平らで模型飛行機に使われるCLARK Y

翼型データベースから持ってきたdatファイルそのままだと解析うまく通らないことがある

http://d.hatena.ne.jp/ina111/20100828/1282977773

を参考に[Refine Globally][Refine Locally]などを試すと良い.

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条件

機速7.0m/s~10.0m/s

コード長1200mm~400mmを想定して

Re = ¥frac{UL}{¥nu}

よりRe = 250000~800000になるので簡単に300000,500000,700000の三つのレイノルズ数で考える

グラフで見るもの

揚力曲線(Cl vs α)

揚力曲線では揚力係数の値と失速角と失速の緩急を見る

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揚力係数が低いと翼面積が大きくなって実際に翼を設計したときに抗力が大きくなる.

失速角が小さいと上昇を試みるときなどにピッチがアップにしにくい

失速角以降の揚力係数の下がり方が緩いと失速特性が良い

揚抗比曲線(Cl / Cd vs α)

揚抗比こそが翼型の性能の一番のポイント

どこに揚抗比最大が来るのかと揚抗比の値がいくつかを見る

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縦揺れモーメント曲線(Cm vs α)

重要度は高くない

Cmの大きさ自体は無尾翼機設計するとき以外は気にする必要がない

失速角以前のところでCmの値の変化があると1次構造材にかかるねじりモーメントのことを考えなくてはいけないのでCmの変化が少ないとすこし嬉しい

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遷移点に関するグラフ(Cl vs Xtr)

直接翼型選びには関係しない.

Xtrは遷移点の位置を表している.

0.6なら翼の60%のところまで境界層が層流だということ.

遷移が前縁に近づくと特性が変わるので少なくても前縁から遷移点までは翼型の再現を良くしようという考え方もある.

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翼型比較

DAEシリーズ

DAE11が赤,DAE21が緑,DAE31が黄

白は比較対象としてDAE31のRe=500000

  • Re=500000

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Clの値はわずかに31が良い

31>21>11の順番に失速角が小さくなる

31>21>11の順番に失速特性が良くなる

最大揚抗比はどれも同じだが最大揚抗比になる迎え角は11>21>31

翼を最大揚抗比で使う必要はないが,11を最大揚抗比で使おうとすると失速角近くになりあまり良くない

失速角までCmの値はかなり安定している.31だけ少し値が離れている

  • Re=300000

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Cl,Cmはレイノルズ数が変わっても変わらず

抗力が増加する分,揚抗比曲線が右下にシフト

遷移点は後縁側にシフト

  • Re=700000

f:id:ina111:20100904140638p:image

Cl,Cmはレイノルズ数変わっても変わらず(黄色と白の曲線はかぶってる)

揚抗比は上に10程度シフト

遷移点はわずかに前縁側に

EPPLER

赤:EPPLER393,緑:EPPLER395,黄:EPPLER396

比較対象として同じReでDAE31を白

  • Re=500000

f:id:ina111:20100905151146p:image

393では10度以上の高迎角のとき前縁先端で剥離してて値が収束しなかった

395,396の揚力曲線はDAE31とかなり近い.失速がEPPLERの方が少し急

最大揚抗比は迎え角が違うくらいで値は近い

Cmの絶対値がEPPLER395,396の方が大きい

  • Re=300000

f:id:ina111:20100905151147p:image

DAE31とEPPLER395,396の各曲線が似ているのは同じ

393の揚抗比が他のと近くなってきた

  • Re=700000

f:id:ina111:20100905151148p:image

この領域でもDAE31とEPPLER395,396は似ている

Cmの値による桁位置とか書く予定

FX76

赤:FX 76-MP-120,緑:FX 76-MP-140,黄:FX 76-MP-160

比較対象として同じReでDAE31を白

  • Re=500000

f:id:ina111:20100905151149p:image

  • Re=300000

f:id:ina111:20100905151150p:image

  • Re=700000

f:id:ina111:20100905151151p:image

NACA4412とEPPLER654とCLARK Y
反転キャンバー

ここまでで疲れたからまたあとで更新

誰か得するのだろうか

参考資料

少しググると出てきたものの列挙

自分では全部は読んでないです.誰得なリンク.

人力飛行機は日本がガラパゴス的に発展してるので日本の人力飛行機のまとめが最強だとは思う

泣く子も笑う,笑う娘は泣く超絶イケメン(笑)@t_maniaの作ったサイト.今はwiki化

http://www21.atwiki.jp/trimaniax/

http://trimaniax.web.fc2.com/

昔の海外の人力飛行機の写真がある.ここぐらいは見て面白いと思う

http://www.flickr.com/photos/amphalon/sets/72157603771356929/with/2208638545/

海外の人力飛行機のまとめならここが良い

http://humanpoweredflying.propdesigner.co.uk/

上と同じサイトだけど図面や写真はここ

http://www.pictures.propdesigner.co.uk/index.html

取り敢えず人力飛行機な人は軽く目を通したいダイダロスについてのwikipediaのページ,誰か早く日本語訳しないかなー(チラッ

http://en.wikipedia.org/wiki/MIT_Daedalus

日本語でお,いや英語でおkと思わせるダイダロスのドイツ語での説明.もちろん読めないけどここのリファレンスは興味あった(ほとんど見てない)

http://de.academic.ru/dic.nsf/dewiki/296678

Low-Reynolds-Number Airfoil Design for the M.I.T. Daedalus Prototype: A Case Study

ダイダロスの試作機として作られたライトイーグルの翼型に関するもの(pdf注意)

http://www.demec.ufmg.br/Cea/Disciplinas/AerodinamicaAplicada/artigo18.pdf

購読しないと読めないからずっと読みたいなと思ってたもの(読んでない)

https://www.annualreviews.org/doi/abs/10.1146/annurev.fl.22.010190.000521

Low Reynolds Number Airfoils MAE 5233

低レイノルズ数での説明がされてるけど,なるほど全然わからんと思ってみたり(pdf注意)

http://www.caselab.okstate.edu/ocharle/projects/LowReAirfoils.pdf

Low Reynolds Number Airfoil Design Lecture Notes

XFOILを使って翼型設計した例.読んでいて頭痛くなるし専門じゃないのに読もうとして不幸になる(pdf注意)

http://www.ae.illinois.edu/m-selig/pubs/Selig-2003-VKI-LRN-Airfoil-Design-Lecture-Series.pdf

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