ダイダロス研究その2

以前に飛行距離世界記録を記録した人力飛行機のDaedalusについてのことをまとめていました。

ダイダロス研究

そのDaedalusの当時の記録映像が「The Light Stuff」(映画の「The Right Stuff」が元ネタ笑)っていう題名でまとまっていてyoutubeに上がっていました。
面白かったので止まってしまった前回の更新を引き継ぐ形でまとめておこうかなと思います。

元映像



 

記録飛行

1988年4月23日にギリシャのクレタ島を出発して飛んでいるDaedalus。美しい飛行機は性能がいいという言葉の通り、かっこよく綺麗に飛んでいます。

出発の瞬間。滑走路に沢山の人が集まってお祭り騒ぎのようです。

飛び出しも横顔もため息出るほど美しい。

パイロット

オリンピック出場クラスの人を5人集めて正式なパイロットにしました。世界記録を狙うにしても贅沢な話です。

パイロットがどのぐらいの出力と時間焦げるのか、出力、酸素量、心拍数を計測したようです。

設計

マーク・ドレラ先生によってこのプロジェクトのためにXFOILとXROTORというソフトが作られ、設計に生かされました。XFOIL(XFLR5)やXROTORについてはこのブログでいくつか記事書いています。

XFOILは低レイノルズ数領域での翼型の解析ソフト。XROTORはプロペラの設計ソフト。Daedalusプロジェクトはパイロットを豪華にするだけではなく、合理的な設計にするための工夫がすごく多いのが自分の中の魅力です。

制作

カーボンのシート(CFRPのプリプレグシート)を芯に巻きつけているところ。手に付いている油がつかないように手袋して丁寧に貼っているのがわかります。この後樹脂が硬化する温度まで焼いて主翼の1次構造材にしているはずです。1980年代になって初めて産業用として使われたCFRPを使っている、当時としては最先端を行く構造設計です。

飛行機の格納庫で制作している様子。日本の鳥人間のチームと違って広々作業しているのがわかります。

当時としては新しい技術なのかわからないが、翼の2次構造材であるリブの材料である発泡剤はコンピュータ制御の熱線で切り出しているようです。CNCのワイヤーフォームカッターというジャンルになると思います。必要なところには人と手間をかけて、省力化できるところは省力化するっていう(その技術力と)合理的な考え方が素敵です。

CNCフォームカッターで切った翼型の発泡材は治具を作って丸鋸でスライスしているようです。日本の鳥人間チームからすると珍しいかと思います。

主翼が必要な荷重に耐えられるかどうかの試験をしている様子。主翼を逆さまにぶら下げてペットボトルで揚力の代わりにしています。

足を漕いだ時の根本になるクランクを繋げるボトムブラケット。これも軽量化を極めるようなアルミニウム合金を使って十分な剛性があるようなギアボックスにしているようです。

プロペラを取り付ける部分(プロペラハブ)。カーボンを多用し軽量化に務めているのがわかります。

手で回してみて駆動系の動きを確認している。

マークドレラ先生が(ラフな格好で笑)プロペラの取り付けをしているところ。XROTORというソフトを作って設計していたみたいです。その解説などこのブログで以前に書いています。

駆動系とプロペラを合わせて回転試験をしているところ。音や振動などで駆動系とプロペラが正常かどうか判断しているのだと思います。

主翼と胴体をくっつけている部分。荷重的に一番シビアになる部分でここの構造も面白いです。

試験飛行をしているところ。砂漠地帯で広々行なっています。

設計変更で主翼の長さを伸ばすために最外の翼を付け替えられるようにしたようです。

主翼の表面あらさによって性能が変わるからだろうか、リブ部分が多少膨らむからだろうか、主翼の表面の前縁材をヤスっています。

接着剤の量も厳しく軽量されていて、刷毛で丁寧に塗っています。

フライトコンピュータを設置しています。超音波高度計やケイデンス計などを搭載してたようだが、試験飛行だとさらにセンサーを増やしているようです。

足回り。狭いようだが、透明フィルムによってパイロットの視界は十分に確保されいるようです。

試験飛行

試験飛行で一度大きなクラッシュをした。危険なクラッシュだったが、パイロットには大きな怪我はなかったようでした。これによって多少の設計変更を迫られたようです。

パイロットには心拍数を測れるようにしています。エンジンのチェックをしているようなイメージでしょうか。

記録

記録本番。風の弱い日を待ってのフライト。

ボトルいっぱいの特別なカロリーなどを調整したドリンクを積んでいます。4時間の運動に耐えられるように専門家が考えて調合しているようです。論文も出ています。

船で追いかけつつ、軍艦が周りにいるところを飛んだりしながら到着予定のサントリニ島に到着したが、目前になって横からの突風によって桁が折れて墜落しました。

記録を求める機械構造物はその役目が終わった瞬間に崩れるぐらいの攻めの設計製作が究極(良いかどうかは知らないが)だと言われるが、まさにその通りの結果になったことも含めて、ドラマチックな世界記録です。

昔、所属サークルで擦り切れたVHSでこの動画を見たような記憶があるのですが、改めてキレイな動画を見ると、ダイダロスプロジェクトが当時としては最先端で合理的で人的・資金的資本を存分に投入した興味深いプロジェクトなのがよくわかります。

リンク

http://web.mit.edu/drela/Public/web/hpa/

Mark Drela先生のホームページですが、ここの中のPDFが非常に綺麗にまとまっています。ここにあるものを読むとだいたい人力飛行機の考え方とか勉強になるかと思います。このブログの記事も多くをこれから引っ張ってきたものです。

 

 

ダイダロス研究その2” への1件のコメント

  1. ピンバック: 人力飛行機Daedalusの動画日本語字幕版 | ina111's blog

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