XROTORの使い方 -実践編1- 人力飛行機プロペラ

前回XROTORの解説を書いたけど、自分でもわけわからないので、簡単に人力飛行機を想定して設計の真似事をしてみる。

流れ

設計要求決定 → XFLR5で翼型解析 → XROTORで翼性能モデル化

 → XROTORで設計 →XROTORで解析 → 修正&解析×∞ → 要求を満たせば完成

設計要求

ブレード数、プロペラ直径、ハブ直径、機体速度、回転数、推力を決める。

このパラメータを色々と変えて全体の最適を決めるのが筋だが、持続的に飛べる機体と短時間の速度を求める機体の2つを簡単に考えてみる。

データは低速機は東工大Meister、高速機はTeam’F’を参考にさせてもらいました。

http://www.meister.ne.jp/reports/prop/2011/12/post-22.html

http://tt-team-f.blogspot.com/

今回はこういうのを入力した。

要求 低速機体 高速機体   
プロペラ直径[m] 3.0 2.7
ハブ直径[m] 0.11 0.12
機体速度[m/s] 7.0 10.5
回転数[rpm] 135 200
推力[N] 26 23
翼型 DEA51+GEMINI 同左

翼型解析

正確に行おうと思うと風洞試験のデータを持ってくるか、自分で試験を行なう必要がある。XFLR5などの翼型解析ではしばしば揚力係数が大きく出すぎることや抗力が小さく見積もられることがある。

今回は簡単のためにソフトウェア上で解析を行う。

今回はDEA51と根元はGEMINIという人力飛行機のプロペラではよく使われる翼型で考えてみる。

使用されるReや構造的な都合などによって使われるべき翼型が変わるので変更するか変形することもあるがあるが、ここで簡単にこの翼型で決め打ち。

http://www.ae.illinois.edu/m-selig/ads/coord_database.html

などの翼型データベースからそれぞれをDLしてきて、拙記事など参考にしてXFLR5で解析を行う。

注意すべきところとしては後縁にギャップがあるのでこれを直しておくこと。

Cl vs Cd と揚力曲線などを見て、XROTORの翼性能のモデル化の材料にする。

下図だと沢山のReで解析しているが、その必要はあまりなくてXROTORのAEROメニューではReの変化も折り込みずのモデルが作られる。

グラフからQPROPの拙記事の下部分のように値を読み取る。

解析しない場合、風洞試験のデータは下のような本から持ってくる。

http://www.ae.illinois.edu/m-selig/uiuc_lsat.html

翼性能モデル

これをXROTORのAEROメニューの中に入れる。

ここでは根元部分から30%まではGEMINI、40%までにDEA51に遷移して翼端までDAE51を使うのをイメージして以下のようにaero sectionを設定。

設計

DESIメニューのINPUコマンドで先ほどの設計データを入れる。

ここでのポイントは揚力係数をいくつにするかである。

一つには揚抗比を最大にする方法。もう一つは失速までに余裕を持って揚力係数を定める方法がある。

性能が良くなるのは前者だが、製作精度が厳しく取れず、回転数や飛行状態が変わりやすい人力飛行機にとって失速しやすかったり、性能がピーキーになりがちになる。なのでよりロバストな性能をもつ後者で考える。ここでは揚力係数一定の”0.6”で考える。

揚力係数を1.0などに設定すると翼弦長が短くなりすぎてRe数が下がって性能がわるくなるのを気にしているという側面もある。

厳密には翼型の変化で段差ができないように揚力係数を調整する方がいい。

PLOTコマンドで設計されたプロペラの表示を行い、HARDコマンドでPostscript形式で保存を行う。

解析

設計が終わるとOPERで解析を行う。例えばかいつまむと。

  • RSEQ : 回転数変化したときの性能を見る
  • BSEQ : 取り付け精度によって性能がどの程度劣化するか見る
  • VSEQ : 機速の変化

などで解析をかけておいて各種データを得る。

修正と解析の繰り返しを経て完成

要求を満たしているか、制限の中でさらに良い性能のものがないかの探索して、満足できるまで修正。

この場合どちらも効率88%程度になったので完成良い性能なのがわかる。

設計法による違い

DESIメニュー中でINPUコマンドやEDITコマンドを行うときに

  • Granded Momentum Formulation
  • Potential Formulation
  • Vortex Formulation

の3つから選択できる。

理論の違いによってこの特に根元付近に違いが出る。

Potential Formulationだと根元が太いが、Granded Momentum Formulationでは根元の翼弦長が0になっている。翼弦長がつぶれてしまうと製作できないので困り、Granded Momentum Formulationを使う場合は根元部分を変えてやらないといけなことがわかる。

XROTORの使い方 -実践編1- 人力飛行機プロペラ” への1件のコメント

  1. ちょっと質問を頂いたりしたので,自分でコメント.
    このブログ記事の中で翼性能モデルaeroで空力特性を入れているのはXFLR5で解析した値です.
    低レイノルズ数領域での解析は値が収束計算が発散ぎみで解析ごとに毎回少し値がズレるので何を信じるのか難しいところです.
    また,固定翼ではなく,プロペラの場合は主流が前方だけではなく,横からも入ってくることから,XFLR5(XOIL)での解析は実際と合わないとも言われています.

    記事中で翼弦長に対してレイノルズ数が大きい値をRe_refというところに入れていますが,これはプロペラ中の最大となるレイノルズ数を意識してのことです.もう少し細かく正確なaeroデータを入れたほうがいいと思います.
    ただ,Re_refの値が実際のレイノルズ数と異なっていても実際のレイノルズ数での抗力係数などに補正されるようになっているので,大雑把でも良いかと思います.

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