誘導損失最小のプロペラ設計プログラム作ってみた

ちょっと前になりますが、「流体機械工学」という本に出ていた設計法でのプログラムをExcelで作りました。

一般運動量理論と翼素理論によるプロペラ設計

この設計法はいわゆるAdkins &Liebeckの設計手法であり、式の導出に問題があるようです。ほとんど誤差が出ないにしても気持ちが良いものではないです。式が複雑になる上に後発の論文なのでAdkins Liebeckの手法の方が格が上に見えますが、今回作ったLarrabeeの手法の方が精度が高いようです。

そこで、今回はこのAdkins &Liebeckの手法ではなく、Larrabeeの手法の設計プログラムを作ってみました。ただし、上と異なって、任意の飛行条件での性能計算は実装していません。

Larrabeeの手法の中身をブラックボックス化しないために数式が読みやすいMatlab(系)で作っているのであって、簡単に設計するのであれば信頼性のあるXROTORを使うのがオススメです。

公開場所

プログラムソースを置く場所としてGithubというのがどうやら流行っているということでGithub上にリポジトリを作りました。

https://github.com/ina111/Larrabee

ダウンロードもすぐにできるし、ソースもブラウザから見られるので便利かと思います。自分は複数PCで開発したい人なので自分にとっても便利でした。Githubなので共同開発みたいなこともやろうと思えば簡単です。

この矢印のZIPボタンからソースを落とせます。

雑記

Simple-Larrabeeフォルダの中身は参考にしている論文読み始めて1日で作りました。参考論文の中身の機能としては揃っています。その後、1週間ぐらいかけてゆっくりXFLR5の解析データから情報を読み込む部分や解析データから必要なデータを補間する部分を作りました。主にGithubに慣れるのに時間がかかったり、CADとの連携をどうしようか思案してプロトタイプを作ったりで時間がかかりました。一通り出来たと思うので完成としました。

Excelで開発した方が多くの人に使ってもらえるだろうけど、Matlab(Octave)だと行列演算が式の見た目通り書けること、積分や補間が非常に簡単で開発にかかる時間が減らせるという理由でOctaveで作りました。

Matlabのようなスクリプト系の言語だと1つのファイルにソースをまとめる人が多いようです。しかし、機能別にサブルーチンにして最上流のファイルでコメントアウトによってサブルーチンのスイッチにする形が好きなので、このような構成にしてみました。

使い方

Githubの方に書いているのでそちらを見るのがいいです。

ソースを自分のフォルダの中に適当に入れて、Octaveを起動します。Larrabee.mのあるところまで作業ディレクトリを移動して、

Larrabee

と入れるとresultフォルダに計算結果が出てきます。

Larrabee.mの中を覗いてやるといくつかのサブルーチンが見えます。”Larrabee_input”と”Larrabee_airfoil_ini”の中身を弄って設定値を変えることで任意の状態の誘導損失最小のプロペラが設計出来ます。

“Larrabee_airfoil_ini”の代わりに”Larrabee_airfoil”を有効にするとCd(抗力係数)とα(迎え角)がCl(揚力係数)とレイノルズ数によっても求まります。ただし、エラーが出やすいことと、プロペラの翼型解析に置いてはXFLR5(XFOIL)の値を信じるのは良くないとは言われているためにデフォルトではコメントアウトしています。

参考になるもの

Larrabee.E.,”Practical Design of Minimum Induced Loss Propellers,”SAE Technical Paper 790585, 1979

作ったプログラムの参考にしたものはこれです。他にも同じような内容の論文をネット上にもありました。

Design of Propellers for Motorsoarers(PDF注意)

著者のE.E.Larrabee先生はMITの教授で”Mr Propeller”と呼ばれ、この論文の内容を生かしてGossamer Albatrossの設計にも携わったようです。

Larrabee先生が亡くなった時の記事

Togetter

http://togetter.com/li/301414

低レイノルズ数でのプロペラ設計の論文も出されている原田さんのTwitterも非常に参考になります。Togetterにまとめてみました。

その他

手前味噌ではありますが、ちょっと前からプロペラに興味を持って、既存のツールの使い方の解説を書いたりしていました。

プロペラ・風車の設計解析ソフトXROTORの使い方

XROTORがフリーソフトになってたのでUbuntu上で動かしてみた

QPROP(QMIL)の使い方

 動画

Larrabee先生も携わったGossamer albatrossとalbatrossの前に作られたGossamer condorの動画は非常に面白いです。

誘導損失最小のプロペラ設計プログラム作ってみた” への1件のコメント

  1. ピンバック: C#で渦法のプロペラ設計プログラム作ってみた | ina111's blog

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