ロケット用センサボード設計した【MTM07に出展予定】

趣味の電子工作ネタ。ブログの文体を統一できない系男子です。

今週末東京工業大学で行われるMake Tokyo Meeting(MTM07)という素人?の電子工作やなんだか面白いものを作ってる人の展示会に『はかるひと』という団体名で『加速度ジャイロ』の展示をします。

fenrirさんHirakuTOIDA さん両氏がすごいもの展示するのに混ざる形です。

設計したもの

今自分たちが作っているようなロケットやモデルロケットは瞬間的な加速度や勢い良くスピンしたりすることがあってそういうところを計測できると機体の特性がよくわかったり、エンジンの特性がわかったり色々なことがわかります。精度も上がればロケットの姿勢がわかるので制御みたいなことの礎になります。

ただ、現在sparkfunなどで安く売られている慣性計測装置(IMU)と呼ばれるものはデータ取得間隔が広すぎて瞬間的な値がわからなかったり、高加速度は得られなかったりします。

ここらへんを上手く取れるように使いやすいセンサボードを設計してみました。

Super SylphideやTiny Featherという無人航空機(UAV)用のオートパイロット装置を開発しているfenrirさんを師匠として、Tiny Featherの拡張モジュールとして設計しました。

飛行機用だったTiny Featherをロケット用にも使えるようにするというプロジェクトです。

高性能なTiny Featherに載っかることによってスーパーなことができるようになるはずです。

専用の拡張モジュールとしてだけではなく、レギュレータで電圧を落としているので3.3Vから5Vまで入力電圧が使えるし、SPIで出力しているので汎用性は高くなっています。適当なマイコンに繋げてやってデータを取ることができます。

今はFusion PCBに基板を発注、Digikeyに部品発注で共に到着待ちの段階です。

MTMは今週末なのにまだ届いてないということで、がんばっても動いているところは展示できるかどうかってところだけど、一緒に展示している人たちがすごすぎるのでいいかなぁっと笑

測れるもの

  • 加速度 ±19[G]
  • 角速度 500[deg/sec]
  • 気圧(絶対圧) 平地から高度14kmぐらいまで(よくわかんない)
  • アナログ出力の外付けセンサ6ch

これらを高分解能な16bit精度で1秒間に1000回以上測れる予定です。

大きさも長辺5cm、短辺3.5cm程度なのでかなり小さいです。

PCB

基板のミスがあって早速Rev.Bを頼まないといけないと思っているところです。

複数枚作る予定なので、サポートも何も出来ないけど必要な人買ってくれないかなぁ。

無線で使えるものだとかなり高いみたいだし、お安くするのになぁ

これの簡易版みたいな感じですね

マーク・ドレラ先生に会いに行った

11月12日。人力飛行機ディスカッションと称する会があった。場所は東北大学。

Daedalusという人力飛行機の世界最長飛行記録を持つ機体の設計者であるマークドレラ先生が東北大で行われた流体系の学会の特別招待講演のついでに、日本の人力飛行機業界の人が集まってマークドレラ先生を囲もうという会だった。

実際は東北大Windnauntsや金沢工業大学夢工房、早稲田大学WASAやうち(Meister)の英語で30分程度の発表・質問などの後、懇親会を行った。

Meisterからは現役が英語発表するのは荷が重いということで、OBになって久しい自分が発表を行った。

人力飛行機の設計方法やMeisterではこうやって作っていますよということの紹介をした。

自分の中では神と崇めている設計者の前で設計方法のプレゼンをするなんて恥ずかしいと思いながら、現実は英語ができなさ過ぎて会話にならなかった笑

ドレラ先生に聞いた話

フェアリングの空気の入出流の考え方や主翼と胴体のつなげ方の話なんかを聞いて面白かった。

フェアリングの話はここに追記しておいた。

プロペラはどこの位置がいいのかって話ではどこでもそんなに変わらないのではないかとか、あと、ウィングレットの効果が中央部の曲げモーメントを変えなかったときに揚力分布から考えて誘導抗力が下がるなんて話とかとか、、、なんか色々聞いた気がするけど自分の中の英雄と会っているということで緊張してしまってだいぶ忘れてしまった笑

聞きたいことはたくさんあったけどあんまり聞けなかった。自分はもう人力飛行機作ることもなく、ファンとして見るぐらいだからまぁいいかとか思って見ていた。

発表内容

(英語が変なことは置いておいて)

大したこと発表してないんだけど、人力飛行機の設計では全体の要求があって空力設計の柱と強度設計の柱があって、それを両方で最適化しなければならないという話がメインだった。

空力設計は揚力線理論とか色々あって、それで計算してやる。強度設計は破壊強度を調べるのが肝心で、そこから運用方法を考えて安全率とか決めてやるとあとは複合材料の材料力学みたいな話があって計算できる。その空力・強度の設計時に、使用を広めているXFLR5などの翼型解析ソフト(元はドレラ先生開発のXFOIL!!)を使ってもろもろの値だったり、桁を通すための太さがあるのかの確認をする。

そして、両方の柱の最適化(どちらかだけでは意味が無い!)を行なってフィードバックを繰り返しつつ、要求を見直しつつ最適化をかけてやる。

人力飛行機はパイロットの低出力側への要求は強いので、軽量で抗力の低いものが必要になってくる。なので最適化みたいなことが必要になってくる。そんななか、強度設計の方にも翼型は関係してくるし、空力最適と構造最適の単独ではなく、両方合わせた最適値に設計しましょう。

みたいなわかってる人には十二分にわかっている話だった。

もう少し具体的に書くと、揚力分布を空力最適な楕円分布に近づけるよりは曲げモーメントの減少を狙って中央部分に多めの揚力、翼端側では少なめの揚力にすると良い。ただし慣性モーメントとか揚力分布が変わってきて運動性が変わってきて、それの影響は別で評価する必要がある。あとフライングワイヤーを付けている機体だと強度(安全率)より剛性部分がボトルネックになりがちなので剛性部分の剛性確保の工夫で最適化する必要がある。

あとはMeisterの人力飛行機の作り方だけどそれはサークルホームページの方が詳しいからここではパス。

まとめ

ドレラ先生と会えて話せるだなんて嬉しすぎて舞い上がって会話にならなかった。ドレラ先生は日本の鳥人間コンテストを興味を持ってちゃんとチェックしているようで嬉しかった。

話は(英語だから全部は聞き取れていないけど)理路整然としていて話の組み立て方だけで頭の良さがわかるほどだった。

自分の中の英雄は会ってみても英雄のままだった。

能代宇宙イベント2011の思い出その2 UNISTAR打ち上げ編

8月のことを11月の今更書くのはちょっと恥ずかしいけど、今年の活動をまとめる時期かなぁと思って書いてみる。

能代宇宙イベントの中でUNISEC(大学で宇宙系のことをやってる団体の集まり)のプロジェクトとしてUNISTAR(ユニスター)というものがあった。

途中からだけど参加して良い経験を得られた。

UNISTARの目的

http://unisonspace.blogspot.com/2011/10/unistarproject.html

に書いてあるんだけど、

  • 学生ロケット団体間の技術交流
  • 缶サットとロケットの交流
  • テクノロジートランスファー

の3本柱。大学生でロケット作っている団体って両手に収まるぐらいはある。各地の学生ロケット団体が方針が違う・日数が少ない・自分たちのプロジェクトと同時並行・技術力()が違う、ということを乗り越えて1つのロケットを作り上げる!っていう熱いプロジェクトだった。

自分は当初は関わる予定はなく、サークルの後輩に参加させて他のところの技術なりプロジェクト運営方法なりを盗んできて欲しいなぁと緩く考えていた。

計画と製作

当初の予定では2機製作し、4発打ち上げる予定だった。

ペイロードにはΦ150の缶サットが入るように設計されていた。能代で打ち上がるものしてはちょっと大きめのサイズ。

これはARLISSというアメリカの砂漠でロケットを打ち上げてそのペイロードで各種競技をすることが「日本で」できるようにみたいな意図があった。

比較的大きなペイロードを積む割に、能代宇宙イベントでは限界の400mまで上げて、かつエンジンをロケット団体でよく使われているHyperTEK社のものを使うということとなった。これによってかなり厳しい軽量化要求があった。

そんな中、経験値の高い設計者の力や東海大の技術によって、すごく良い物が作れていた。(自分は何もしてない笑)

写真はダミーのペイロードを載せているところと分離開放機構部分。

1発目の失敗

8月22日UNISTAR1機目打ち上げ。この機体のペイロードはダミーのものだった。この打ち上げに成功すれば次の打ち上げで東工大松永研の缶サットを搭載する予定だった。

綺麗に打ち上げるものの、上昇途中で分離機構によって分離されるはずの部分(フェアリング)が外れるトラブルが起こった。しかもロケットのパラシュートと缶サットのパラシュートが絡まってしまった。

パラシュートは開いているものの落下ですぐには修復できない程度まで壊れてしまった。

すぐに原因究明されて、分離機構の不具合と軽量化しすぎのためにフィンの剛性不足だとわかった。

2機目の改造

その日夜の代表者会議でUNISTARプロジェクトをこれで手打ちにするか、どうかが議論された。

自分たちのチームは前日までに打ち上げが終わっていたが、他のところはこの後自分たちの打ち上げがあって人手が出せないこと、すぐに改修するのは大変だろうということで2機目の打ち上げを中止するかっ!という話しになった。

ここまで自分は参加もせずにぼんやり聞いていただけだったが中止にするにはあまりにも勿体無いものだと思っていたので、改修は任せてもらって2機目を打ち上げようと提案した。

みんな打ち上げたいという思いはあったので2機目も打ち上げることになった。

次の打ち上げまでは丸2日しかなく動ける人も少なかったので自分も本格的に動いた。2機目打ち上げを決めた次の瞬間には改造案を元に、近くのホームセンターが閉まるギリギリで駆け込んだぐらいだった。

2日間の真夜中まで続く作業でなんとか改良ができた。

具体的にはフィンの部分をホームセンターのスチール棚のから切り出して作った。それに金属部品修理用のエポキシパテをつかってフィンの剛性を上げた。

2機目打ち上げ

小雨の中、各大学の担当が気合をいれて準備が進められ2機目の打ち上げの準備がされた。

打ち上げ前がみんなの緊張感と盛り上がりが最高に達していた。

これ以上ないってぐらいの美しい打ち上げだった。まっすぐキレイに飛んでいった。

きちんと頂点でパラシュートがひらいて缶サットもまっすぐ降りてきた。

高くまで上がったのにランチャーのすぐ脇に降りてきた。

まとめ

打ち上げは完璧に成功だった。技術交流もかなり達成されて、すごく良いプロジェクトだった。目的の1つである缶サットとの交流はこの場所では出来なかったが、このあと缶サットを載せつつもりだった東工大松永研のプロジェクトチームがうちのチームに合流することになったことを考えると、もう1つ目的は果たせたのかと思う。

途中参加で美味しいところを持って行ってしまった感じになったが、みんなで1つのものを作って成功させる。それもかなり困難がある中、次に繋がる可能性のあるプロジェクトに参加できたことはとても良かった。

能代宇宙イベント2011の思い出その1 CREATE打ち上げ編

2011年8月のことだけどまとめていなかったのでUNISECという団体に報告書を書いたついでに今更まとめてみる。

大学でCREATEというロケット作るサークルを主催しています(いました)。

はじまり

今回の記事の内容のはじまりは2010年度の能代宇宙イベントに見学に行ったところから。

単身での行き方を迷っていたら有人ロケット研究会の方たちに連れていってもらった。

見学していると「これは中々面白そうだ。」と思い次の年は参加しようと意気込んだ。

製作

時は移って、2011年度の4月。同期たちは就活やらなんやらで忙しそうな中、一人暇だったのでCREATEというサークルの新歓を一人でやって人数を集めた。

目標は大学内に継続的にロケットを作る団体を作ること。

工業大学なだけあって、優秀な新入生が集まってくれた。

自分は他に気が散ってしまうことが多くて集中できない中、能代宇宙イベント2011に向けて動いた。新入生に講習したり、一緒に作業したり、まったりしたり。

7月中旬の授業が少なくなった頃から本気で作り始めた。

自分はディレクションの仕事がメインで実働は新入生だった。作業の中で同期や4年生も参加してくれた。

そんなこんな(作業場に籠りきりや徹夜とか)で完成した。全長2m弱・重量6kg程度。高度400m(場所の制限いっぱい)を目指したものになった。ロケットの挙動解析のためのアビオニクスも新入生が作ってくれた。5月の段階でマイコンって何?って状態から8月初旬までで良く作ってくれた。

マネージメントやディレクションだけでは工学部学生として面白く無いので自分でペイロード(ロケットが運ぶもの)も作った。上空を撮影しつつ、高度や姿勢、GPS位置情報を取得しようとした。

このペイロードは結果的には全くうまくいかなくて反省点ばかり。他の部分に自分のリソースを割きすぎた。

秋田県能代についてから

能代宇宙イベントの会場は全体的に草に覆われて必要な部分はキレイに整地されている環境だった。

風力発電の風車が回っているところでロケットを打ち上げるというワクワクが刺激される良い場所。

真夏だけど秋田県なだけあって猛暑ではなかった。

能代宇宙イベントは学生ロケットの打ち上げだけではなくて、小型模擬人工衛星の缶サットの人たちもたくさんいる。写真は東京工業大学の缶サットチーム。能代宇宙イベントの後、一部がうちに入ってくれて一緒に面白いことをしようとしている。

発射台にセッティングしている様子。

一度不点火してしまってネット中継の時間には間に合わなかったが、2度目の点火で無事に打ち上がった。

まっすぐ美しく上昇していった。このときの興奮は他では味わえない、良いモノ。

光学観測で高度の情報が得られた。

最高高度の時点でパラシュートを開こうとしたが、事前試験のしすぎによって扉を締めるための糸の通り道が擦れて普段と違う場所を通ってしまって扉が開ききらなかった。このときペイロードも展開せず。

高度50mまで自然落下してきたところで突然パラシュートが開いた。

想定以上の速度でパラシュートが突然ひらいたことによってパラシュート根元近くの塩ビ管の部分で割れた。

このことは搭載した加速度センサと角加速度センサからもわかる。

結果的に

狙ったミッションの完全成功とはいかなかった。しかし何もかもが新鮮であり、得られるものはすごく多かった。

なにより、終わった後のこの集合写真を見ていたら、「達成感とやりがい」は「お金」や「他のことをしていた時間」よりも貴重なものだなと思った。