過冷却液体酸素の密度の話


ロケットにおいて、推進剤の高密度化は極めて重要な開発要素。

特に固体ロケットなんかでは推進剤の粒径がどうだの、最密充填がどうだのっていうのはよく聞く話。能力に直結する大事なもの。

液体ロケットの場合でも過冷却液体酸素を使うことにより推進剤の高密度化で、構造重量を削減し、ロケットの能力を上げようというロケットがある。

SpaceXのFalcon9で採用されている技術だが、ネット上に定量的にどのぐらい効果があるのか出てきてなかったので、計算ツールを使って出してみた。

Falcon9がお客さんの荷物を減らさずに再使用のため着陸できるようになったのは、この過冷却のお陰だろう。能力が上がったで着陸に推進剤を残すことが出来るようになったはず。

温度が違うと様々な特性が変わってしまって開発要素は増えるし運用生も悪くなる、それでも液体酸素(LOX)の密度がこれだけ劇的に変わって魅力的。

Falcon9の場合、大気圧化(0.1MPa)の沸点は-183℃(90K)だが、Supercooled LOXとかSubcooled oxigenとか表記される過冷却液体酸素では-207℃(66K)程度で使用されているようだ。(ソースによって温度が微妙に違うので”程度”)

この場合、グラフから見て取れるように、液体酸素の密度は1割弱増している。

極低温流体は温度によって密度が大きく変わるのはよく知られているが、可視化してみると面白い。

(グラフの見方としては、非連続で大きく変わっているところが液体ー気体の境目です。)

(ちなみに、計算ツールの中身まで見てないので、このグラフはあくまで”参考”程度の信用度です。)

【追記:2017年3月14日】
https://twitter.com/S101_Live/status/841512890309976064
こちらの情報によるとSpaceXのFalcon9ではLOXの温度は-207℃、RP-1は-7℃に冷やしているようです。

%e9%85%b8%e7%b4%a0%e3%81%ae%e5%9c%a7%e5%8a%9b%e6%b8%a9%e5%ba%a6%e5%af%86%e5%ba%a6%e3%81%ae%e9%96%a2%e4%bf%82_%e3%82%bb%e3%83%ab%e3%82%b7%e3%82%a6%e3%82%b9%e6%b8%a9%e5%ba%a6 %e9%85%b8%e7%b4%a0%e3%81%ae%e5%9c%a7%e5%8a%9b%e6%b8%a9%e5%ba%a6%e5%af%86%e5%ba%a6%e3%81%ae%e9%96%a2%e4%bf%82_%e7%b5%b6%e5%af%be%e6%b8%a9%e5%ba%a6

宇宙活動法の制定に伴う殴り書き


宇宙関連2法が参院本会議で可決・成立 | NHKニュース 

NHKの報道に取材を受けました。コメント載ってます。

取材では30分ぐらい話したけどほぼカットされているので、もう少し追加。
コメントでは「待ち望んでいた」と取材側の意図ピッタリのところだけ抜き取られているけど、宇宙活動法自体は規制のための法律なので、可能なら無しがいい。

「規制はあるより無いほうがいい」っていう事業者として当たり前のこと。
「おめでとう!」って声かけられるけど、そんなにうれしいものではない・・・

それでもなぜ必要で、待っていたか?国際法の枠組みではロケットが他国に落ちて損害賠償の話しになったときに打上げた主体のいる国が補償しなさい(誰が打上げようと構わず)ということになっている。知らんやつが勝手に打上げて補償の問題になると国が困るから法律が必要。
ケツ持ちするから、審査させろっていうのが向こうの理論。

これまではJAXA法の中だけだったけど、民間事業者が出てきたから制定。
アメリカでは同様の法律が1984年にはできていたので、30年遅れている。
それぐらい民間事業者が出てこなかったのも問題だし、現行法でなんとかしようって工夫でやり過ごしてきたっていう経緯もある。

法律があると良いことは、対外的な説明の際にコンプライアンスとか作業の段取りの説明・見通しがつくところ。
うちは別としても、普通の民間事業者はコンプライアンスとか事業リスクとか真面目に書き出すときに法律の有無は重要なので、宇宙活動法があると他にも事業者が出てくるかもなぁというところ。
国内でも基幹ロケットではない、新しいロケットを作る会社が出てくるって予想している。っていうか聞いてる。

その良いところ以外は正直「ちっ、めんどくせーな」という気持ち。企業の「ちっ、めんどくせーな」って最低でも数百万数千万円の必要経費というか投資になってしまう。無いほうがいいに決まっている。

 

〇な点

・無人サブオービタル飛行(弾道飛行:人工衛星にならないやつ)は法律の範囲外になったこと
民間事業者もペンシルロケットとかの流れと同様に開発のステージを踏むことになる。
人工衛星の前のサブオービタルは規制の範囲外にすることによって、サブオービタルの開発段階のようなデスバレー入口のところでのハードルは無くしてくれている。
これはグッジョブ。アメリカより産業のことを考えていて進歩的。
他の国の状況とかを見るに、近い将来学生ロケット大学ロケットとかも大幅に進化するポテンシャルはあって、これが規制に入らないことによって、大学ロケットの人材育成の可能性も見えてくる。
まぁ、本当のデスバレーの一番深いところでこの宇宙活動法っていう規制があるんだけど・・・

 

不安な点

許認可制のため、審査があるが、誰がどのように審査するのか決まっていない。これから運用方法が決まる。
そもそも国の審査っていうことを信用も信頼もしていないので、不安。
M-02Jという飛行機の国交省航空局へ許認可に際して仕事としてお手伝いした際に、嫌な目にあった。
飛行機と同じようなあんな審査体制な場合、ロケット打ち上げのハードルはかなりあがる。
</s>まず、工学をわかっているやつを出せ。<s>
背広の方々の話では、飛行機みたいにはならないとの説明だが、運用がまだのため不安。

無いとは言われているが、JAXAのロケットと同等程度審査をしたら、民間事業者のロケットは絶対に上がらない。
基準がアポロのとき(1960年代)の延長で、無駄に厳しいし、そもそもの無駄もあるみたい。
現在のところの方針として安全以外のミッション成功などの部分は審査無しと聞いているが、どうなるか注視。

 

△な点

アメリカの同等の法律であるCommercial Space Launch Actでもそうだが、民間の事業ステージ(開発ステージ)があがると法律も改正される。
この宇宙活動法はまだまだ視座が低い。目の前の事業に向けて書かれている。
もっと将来の宇宙開発のこととか心の準備ぐらいしててもらうといいのになぁと思っている。

 

まとめ

アメリカの例を上げると、民間ロケット会社は山ほど出来て、山ほど潰れていってる。
(会社は潰れてるっていっても、中身の人は色々と移動しているって話しだけど。)
基礎の基礎の法律が出来たからって「よし、これで産業応援したしオッケー」と終わりにしないで貰いたい。
アメリカでも政策があってようやく民間の台頭の時代が来ているって認識は色んな人と共有しておきたい。

 

以上、一般の人向けなのか、業界の人向けなのか微妙なところの深夜の殴り書き。