プロペラ・風車の設計解析ソフトXROTORの使い方

人力飛行機などのプロペラや風力発電用の風車の解析や設計をやりたい人向けの記事です。

ブレードが回転するものの設計ならかなり汎用的に使えるはずです。

CUIソフトなので少し取っ付きにくいですが、慣れれば短時間で細かく設計・解析ができます。

解説を書いていますが、関連論文を全部精読しているわけではないので間違っている所が多くあるかもしれません。

プロペラ解析・設計ソフトの概要

ソフトの製作者はMITのMark Drela教授。人力飛行機の長距離飛行の世界記録を持っているDaedalusの機体設計のために開発されたようです。

公式HPのユーザーガイドによると以下の機能があります。

  • 誘導損失最小の回転翼の設計(プロペラや風車)
  • 任意の回転翼の形状の入力
  • 回転翼の形のインタラクティブな変更
  • 任意の回転翼の誘導損失最小となるねじり角の最適化
  • 回転翼の解析
  • プロペラに入って来る流れの影響の考慮
  • 構造解析と荷重がかかった状態のねじり角の解析
  • 音響解析をした騒音範囲予想
  • 幾何データや空力パラメータ、性能マップのプロット

回転翼の空力的な設計と解析に加えて、構造解析や音響解析もできる機能があります。

プロペラや風車の適応範囲はとても広いです。飛行機や飛行船、ホバークラフトのプロペラ、扇風機の羽、PCファン、揚力型の風力発電のタービンの設計まで可能です。ヘリコプターや水中プロペラもできるようですが、元々空気中かつ低Reの航空機のプロペラの設計ソフトとして開発されているので精度は不明です。

空気中であっても解析できないものとしては2重反転プロペラや回転面から傾斜角がついたプロペラがあります。

設計手法

プロペラの設計手法として大きく分けて二種類あります。

  • Betzの条件を用いて適切な近似を行うことで設計を行う手法

この中でよく使われる方法はLarrabeeの設計法というものです。このLarrabeeからもう少し近似を行ったAdkins・Liebeckの設計法という方法は以前に人力飛行機のプロペラの設計解析できるようなエクセルファイルを作ったりしましたが、近似式の変形がアヤシく、条件によっておおきく誤差が生まれる理論になっています。

  • 渦法と呼ばれる手法

プロペラが回ることで後流が誘導されるのをビオ・サバールの法則を用いて計算して性能計算を行い、プロペラ『効率』の最適化問題を解くことで設計する方法です。前述のBetzの条件の手法ではプロペラ『損失』最小の最適化問題を解くので何を最適にするかの考え方が違います。

XROTORでは改善されたLarrabeeの設計法を用いています。元となるLarrabeeの設計法の弱点としてレイノルズ数が小さい領域(Re<300,000)では誘導エネルギ損失だけではなく形状抗力の損失が大きくなるのに対応していない問題があります。これをXROTORではレイノルズ数による形状抗力の変化のモデルを取り入れることによって改善しています。

プロペラ設計・解析ソフト

ダウンロード・インストール

XROTOR Download Page

からソースコードが配布されているのでこれをWindowsかLinuxでビルドすると使えます。

Linux、特にUbuntuで使うためには過去の記事を参考にしてください。非常に簡単です。

XROTORのUbuntuへの簡単インストール方法

XROTORがフリーソフトになってたのでUbuntu上で動かしてみた

実行

Windows環境で.exeを作った場合は別だが、LinuxのターミナルやCygwinなどから起動する方法。

xrotor

もしくは

xrotor save_file case_file

で起動する。ここでsave_fileは以前に作ったプロペラの形状のファイル。case_fileは解析ファイル。これらの引数を書くと現在のディレクトリ(フォルダ)と同じ場所に保存されてたファイルの中身が読み込まれる。save_fileを書くとLOADコマンドをしたのと同じ。case_fileはOPERメニューでCGETコマンドしたのと同じ。

XROTORの全体の構成としてはトップレベルメニューがあって、そこからサブメニューにわかれている。(図)

一般的な使い方としては

XROTOR   c&#62;   desi
.DESI   c&#62;  &#60;Return&#62;
XROTOR   c&#62;

とするとサブメニューに飛んでからトップレベルメニューに戻ってくる。

?コマンドを入れるとそのメニュー中で使用できるコマンドの一覧が表示される。

使い方

起動するとトップレベルメニューに入れるのでそこから各サブメニューに移動して設計・解析を行う。

DESIサブメニューで設計してOPERサブメニューで解析を行なってPLOTコマンドで解析結果を見るのが基本的な流れになる。

最後に各サブメニューのコマンド内容の日本語訳を載せておきます。

AEROサブメニュー

Larrabeeの設計法の弱点をなくすためにRe数と翼型の性能を指定する必要がある。それがAEROサブメニュー。

もし一つのaero sectionしか存在しないと全てがその条件ということになる。もし複数あれば線形補間されることになる。

f = -0.1 to -0.2 ;高Re乱流 Re &#62; 2M
f = -0.5 to -1.5 ;低Re領域 Re ~ 200K..800K
f = -0.3 to -0.5 ;ほぼ層流 Re &#60; 100K

低Re領域においてはfが強く影響している。

失速前と失速後の2つのモデルを簡単に合わせたものを翼型特性のモデルとしている。

この扱いは地上の2次元翼ではそこそこ正しいが、実際のローターは強い遠心力とコリオリ力によって境界層流れを剥がそうとするのでかなり異なる。

Mcritは圧縮性の効果に効いてくるファクター。

¥delta C_D = K (Mach - M_{crit})^2

圧縮性が効いてくるときは試験されたデータをもってモデルを確認する必要がある。

技術的なこと

解析における手法の違い

FORMコマンドによって以下に述べる誘導速度と誘導損失の計算手法を選択できる。

両手法はローターのブレードを揚力線として扱う。共に円盤荷重が比較的小さく、したがって後流の収縮や自己変形が小さいと仮定している。

  • Granded Momentum Formulation

プロペラにおいて古典的手法でE.E Larabeeが復興さえたもの。Betz-Prandtの先端損失誤差に頼っている。これはローターが低進行率もしくは多くのブレードがある場合を仮定している。結果としてこの手法は進行率0.5以上では適応できないとある。主なアドバンテージは極めて計算量が少ないこと。

  • Potential Formulation

これは少し現代的なアプローチである。リジッドならせん状の後流について螺旋対称のポテンシャル流を解くものであり、これはブレードの数や進行率が任意で適応できる。これはGoldsteinの2つと4つのブレードの計算をすべてのブレード数と任意の円盤荷重に拡張したものである。デメリットとしてはこのアプローチはGraded Momentumより計算量が多くなる。しかし現在の計算機では気にするほどではない。この手法は微小な半径のローターハブと取り付けられたナセルも取り扱うことができる。これはBetz-Prandtlの誤差では適切に取り扱えないものである。この手法はまたローターの先端の境界条件(ダクトの有無)を変えることが出来る。これはTOP LEVELでDUCTコマンドで有効無効にできる。

  • Vortex Formulation

渦法。これは誘導速度計算による離散化された渦後流を使うもの。離散化された直線渦(無限遠の下流側の揚力線から得られたリジッドな螺旋状の後流)によってプロペラ揚力線上の速度が計算される。このオプションは傾斜や後退角の付いたブレードのプロペラのためのもの。この渦法はポテンシャル流の手法より少し計算時間がかかるより色々なプロペラ形状を扱うことが出来る。後流が自己変形しないことに注意。渦法はOPERかDESIメニューのVRTXコマンドで有効になる。理論的には非平面のプロペラも解析可能だが、XROTORではそのような幾何形状の入力をサポートしていない。

JMAPコマンド

このコマンドで作られるデータはCp vs Jの等ブレード角と等効率の等高線としての2次元プロットである。プロペラのパフォーマンスの要約であり、アメリカのプロペラメーカHamilton Standardなどによって使われている。このコマンドはポテンシャル流の手法を使っているときならいつでも実行することができる。ギザギザの等高線の生データはかなり早く生成できるがより高品質なプロットを求めるために実行時間が必要である。JMAPコマンドで生成されるデータはテキストエディタなどで読むことができない。Ubuntuなどにはデフォルトで入っている”JPlot”というソフトでグラフにすることが出来る。

jplot
Enter dump filename s&#62; (dumpファイル名)
go
go
y

のコマンドでグラフ化できる。

単位と無次元化

XROTORではSI単位系が使われている。しかし内部の計算は全て無次元化してから計算しているので全てを別の単位系でインプットすればその単位系で出力される。例えばmm単位でインプットして計算すると出力はm単位のように出力されるが、実際はmm単位の結果になっている。

T_c = ¥frac{T}{¥frac{1}{2} ¥rho V^2 ¥pi R^2} 、 P_c = ¥frac{P}{¥frac{1}{2} ¥rho V^3 ¥pi R^2}

C_t = ¥frac{T}{¥rho D^4 n^2} 、 C_p = ¥frac{P}{¥rho D^5 n^3}

J = ¥frac{V}{n D} = ¥pi ¥frac{V}{W R} 、:W = w¥pi n[rad/s]

¥eta = ¥frac{T_c}{P_c} = J ¥frac{Ct}{Cp} 、 G = B ¥frac{¥frac{¥Gamma}{VR}}{2¥pi L_w}

¥eta _i L_w = ¥frac{V}{WR}

nは回転数/秒[rps]、Gammaは循環、Lwは後流進行率。eta_iは非粘性の効率、V\WRは幾何的な進行率。

Gは理論的なペラ効率の上限にどれだけ近づいているかの指標で1.000に近いほど良い。

風車の場合

XROTORの入力と出力はプロペラがデフォルトになっているが、風車設計と解析も可能である。風車で覚えておく必要のあることは負の(CL、推力、トルク、パワー、レシプロ効率)になることである。複雑になる部分は CLの値が負になるプロペラに対して、風車のブレードの翼型は常にプロペラと上下反対になる。揚力曲線などは原点に対して対称である。

a_0 → -a_0 、 CL_0 → -CL_0

CL_min → -CL_min 、 CL_max → -CL_max 

AEROメニューのREFLコマンドはこの反対にするのを自動でやってくれる。別の方法としてXROTOR.DEFファイルを変えても出来る。風車を設計するときは負のCLによって推力かパワーが負になる。

出力されたPostscriptファイル

Linuxの場合imagemagickなどのソフトを使うと

convert plot.ps &#60;変換後のファイル(例えばplot.jpg)&#62;

を端末上でコマンドを打つと変換できる。画像が粗い場合はconvert -density 250 plot.ps <変換後のファイル.jpg>にすると良い。

横長のpsファイルはうまく変換出来無いことが多いのでその場合はInkscapeやIllustratorなどで変化すると良い。

トップレベルメニュー

QUIT   プログラムを終了
.AERO   翼型特性サブメニュー
NAME s 名前をつける
ATMO r 標準大気から空気のプロパティを設定(rには高度(km)を入力)
VSOU r 音速の変更(m/s)
DENS r 空気密度の変更(kg/m^3)
VISC r 空気の粘度の変更(kg/m/s)
NACE f ナセルの幾何ファイルの設定
DUCT r ダクトか自由端かのスイッチ
VRAT r ダクトの速度比の変更
ARBI   任意のローターの幾何条件の入力
.DESI   デザインサブメニュー
.MODI   修正サブメニュー
.OPER   設計点以外での特性計算サブメニュー
.BEND   構造荷重とたわみの計算サブメニュー
.NOIS   音響解析サブメニュー
JMAP   Cp vs J operating map
INTE   指定の半径に補間
SAVE f ローターをリスタートファイルに保存
SAVO f ローターを古いタイプのリスタートファイルに保存
LOAD f ローターをリスタートファイルから読み込み
WDEF f 現在の設定をxrotor.defファイルに書き込み
VPUT f 後流の速度データの保存
VGET f 後流の速度データの読み込み
VCLR   後流の速度データの消去
HARD   現在のプロットをPostscript形式で保存
WIND   風車/プロペラのプロットモード変更
PLOP   プロットオプション
DISP   現在の設計点の表示

ARBIコマンドで任意の幾何形状のローターを入力できる。

r/R, chord/R, blade angle.を書いたファイルを読み込む。点と点はスプラインによって結ばれる

.DESIサブメニュー

INPU    設計パラメータの入力... design rotor
.EDIT    設計パラメータの編集... design rotor
.FORM    後流と速度の公式の選択
ATMO r  標準大気から空気のプロパティを設定(高度km)
DISP    現在の設計点の表示
TERS    簡潔出力(terse)か冗長出力(verbose)かの選択
ITER i  ニュートン法の最大反復回数の変更
N    i  点の個数の変更
NAME s  名前の変更
PLOT i  様々なローターのパラメータのプロット(1~12))
ANNO    現在のプロットの注釈
HARD    現在のプロットをPostscript形式で保存
SIZE r  プロットの大きさの変更

INPUコマンドで設計を行う。以下の2つはどちらかしか選択できない。

{ advanced ratio , rpm} , {thrust , power}

.MODIサブメニュー

BLAD i  ブレード数の変更
MODC    コード長の分布の修正
MODB    ブレードのねじり角の分布の修正
SCAL rr 現在のコード長から大きさ変更(AとB) (Chord)new = (Chord)old * [A + B(r/R)]
TLIN r  線形にねじり角を増やす(deg)
RTIP r  先端半径の変更(コード長/Rは一定)
RHUB r  ハブ半径の変更
RWAK r  ハブの後流のbody半径からの変位の変更
RAKE r  ブレードの傾斜角の変更
XPAX r  ピッチ-軸x/cの変更
CLPI r  Clip current prop at inner radius (preserve chord)
CLPO r  Clip current prop at outer radius (preserve chord)
OPTI    現在の平面形でのブレードのねじり角の最適化
PLOT i  様々なパラメータでのプロット(1~12))
ANNO    現在のプロットの注釈
HARD    現在のプロットをPostscript形式で保存
SIZE r  プロットの大きさの変更

MODCとMODBコマンドはコードとβの分布をマウスからいじれるとあるが、うまくいかない。

OPTIコマンドは設計と変更の両方を行えるコマンド。ねじり角(βの分布)をMIL循環でコード分布は一定のまま再配置してくれる。ねじり角の”optimizes”の意味である。

このOPTIコマンドは注意しないといけない。MIL循環は失速について考慮していない。また最適な(optimum)MIL分布は全体においての最適とは限らなく、他の動作点ではわるくなるかもしれない。

他の動作点での性能の良し悪しは緩和係数(relaxation factor)による。緩和係数は1.000より小さいほうがオフデザイン時の性能がよくなる傾向がある。

.OPERサブメニュー

ADVA r   進行率の指定[-]
RPM  r   rpmの指定
THRU r   推力の指定[N]
TORQ r   トルクの指定[N-m]
POWE r   パワーの指定[W]
ASEQ rrr 進行率を変化させたときの計算
RSEQ rrr rpmを変化させたときの計算
BSEQ rrr ピッチ角を変化させったときの計算
VSEQ rrr ピッチ角を固定してスピードを変化させたときの計算
CLRC     貯めたデータを消去
ADDC     貯めたデータを追加
CPUT f   貯めたデータをファイルにエクスポート
CGET f   データをファイルから呼び出し
CASE i   場合を選ぶ
ATMO r   標準大気から空気のプロパティを設定(高度km)
VELO r   巡航速度の変更
ANGL r   ピッチ角の変更
PVAR f   エンジンのrpm/power曲線の入力
FORM     後流と速度の公式の選択
NAME s   事例の名前の変更
WRIT f   ファイルに現在の動作点を書き出し
DISP     現在の動作状態の表示
INIT     次の解析事例の初期化
REIN     Re-initialize prop to known operating state
TERS     出力を簡易か冗長かスイッチ
ITER i   ニュートン法繰り返し数の最大値の変更
N    i   点の個数の変更
PLOT i  様々なローターのパラメータのプロット(1~12))
ANNO    現在のプロットの注釈
HARD    現在のプロットをPostscript形式で保存
SIZE r  プロットの大きさの変更

ADDC,ASEQ,RSEQ,VSEQ,BSEQコマンドで解析したものは”case accumulator”に貯められる。

.AEROサブメニュー

DISP  翼型特性の表示
NEW   新しいセクションを作る
DEL   指定のセクションの消去
EDIT  セクションの空力データの編集
DISP  翼型特性の表示
LIFT  揚力特性の変更
DRAG  抗力特性の変更
MOVE  セクションの位置r/Rの変更
REFL  風車(windmill)モードのためにCLとCDカーブの正負反転
PLOT  翼型特性のプロット
READ  ファイルから翼型特性の読み込み
WRIT  ファイルへ翼型特性のエクスポート
PLOT  翼型特性のプロット
ANNO  現在のプロットに注釈をつける
HARD  現在のプロットをPostscript形式で保存

.BENDサブメニュー

荷重とたわみの解析

READ f ファイルからブレードの構造特性読み込み
EVAL   構造荷重とたわみの評価
CLR    全てのたわみの削除
DEFL   Set new twist  =  static  +  structural twist
REST   Set new twist  =  static twist
SETS   Set static twist = current - structural twist
WRIT f 構造解析をファイルに保存
PLOT i  様々なローターのパラメータのプロット(1~12))
ANNO    現在のプロットの注釈
HARD    現在のプロットをPostscript形式で保存
SIZE r  プロットの大きさの変更

.NOISサブメニュー

騒音解析

P   rrr 観測点 x,y,z での音響p(t)の計算
FOOT rr dB騒音マップの計算
NTIM i  サンプリング数の変更
UNIT    単位系の変更 m,ft
AOC  r  ブレードの断面積area/c^2 の設定
AFIL f  ファイルからブレードの断面積area/c^2
PLOT i  様々なローターのパラメータのプロット(1~12))
ANNO    現在のプロットの注釈
HARD    現在のプロットをPostscript形式で保存
SIZE r  プロットの大きさの変更

XROTORのUbuntuへの簡単インストール方法

XROTORというプロペラと風車の設計・解析ソフトがあって非常に有用です。

以前に↓にUbuntu上でのビルド方法を書いたのですが、更にインストールが簡単になりました。

XROTORがフリーソフトになってたのでUbuntu上で動かしてみた

sudo apt-add-repository ppa:vbkaisetsu/ppa
sudo apt-get update
sudo apt-get install xrotor

の3つのコマンドを打つだけです。

Koichi Akabeさんが個人でインストールしやすい形で置いてくれている状態なので、今のところUbuntuの11.10、11.04、10.10、10.04だけでしかインストールできません。それ以外のバージョンでは上のリンクのようにビルドしてください。

コマンドの内容としては、1行目でリポジトリを追加し、2行目でリポジトリの更新してから3行目でxrotorでインストールです。

リポジトリへのリンクは↓になります。

PPA for Koichi Akabe : Koichi Akabe

XROTORはすごく使えるソフトなのに解説みたいなものが海外含めてあまりないので、そのうち簡単な解説を書きたいと思っています。

ロケット用センサボード設計した【MTM07に出展予定】

趣味の電子工作ネタ。ブログの文体を統一できない系男子です。

今週末東京工業大学で行われるMake Tokyo Meeting(MTM07)という素人?の電子工作やなんだか面白いものを作ってる人の展示会に『はかるひと』という団体名で『加速度ジャイロ』の展示をします。

fenrirさんHirakuTOIDA さん両氏がすごいもの展示するのに混ざる形です。

設計したもの

今自分たちが作っているようなロケットやモデルロケットは瞬間的な加速度や勢い良くスピンしたりすることがあってそういうところを計測できると機体の特性がよくわかったり、エンジンの特性がわかったり色々なことがわかります。精度も上がればロケットの姿勢がわかるので制御みたいなことの礎になります。

ただ、現在sparkfunなどで安く売られている慣性計測装置(IMU)と呼ばれるものはデータ取得間隔が広すぎて瞬間的な値がわからなかったり、高加速度は得られなかったりします。

ここらへんを上手く取れるように使いやすいセンサボードを設計してみました。

Super SylphideやTiny Featherという無人航空機(UAV)用のオートパイロット装置を開発しているfenrirさんを師匠として、Tiny Featherの拡張モジュールとして設計しました。

飛行機用だったTiny Featherをロケット用にも使えるようにするというプロジェクトです。

高性能なTiny Featherに載っかることによってスーパーなことができるようになるはずです。

専用の拡張モジュールとしてだけではなく、レギュレータで電圧を落としているので3.3Vから5Vまで入力電圧が使えるし、SPIで出力しているので汎用性は高くなっています。適当なマイコンに繋げてやってデータを取ることができます。

今はFusion PCBに基板を発注、Digikeyに部品発注で共に到着待ちの段階です。

MTMは今週末なのにまだ届いてないということで、がんばっても動いているところは展示できるかどうかってところだけど、一緒に展示している人たちがすごすぎるのでいいかなぁっと笑

測れるもの

  • 加速度 ±19[G]
  • 角速度 500[deg/sec]
  • 気圧(絶対圧) 平地から高度14kmぐらいまで(よくわかんない)
  • アナログ出力の外付けセンサ6ch

これらを高分解能な16bit精度で1秒間に1000回以上測れる予定です。

大きさも長辺5cm、短辺3.5cm程度なのでかなり小さいです。

PCB

基板のミスがあって早速Rev.Bを頼まないといけないと思っているところです。

複数枚作る予定なので、サポートも何も出来ないけど必要な人買ってくれないかなぁ。

無線で使えるものだとかなり高いみたいだし、お安くするのになぁ

これの簡易版みたいな感じですね

マーク・ドレラ先生に会いに行った

11月12日。人力飛行機ディスカッションと称する会があった。場所は東北大学。

Daedalusという人力飛行機の世界最長飛行記録を持つ機体の設計者であるマークドレラ先生が東北大で行われた流体系の学会の特別招待講演のついでに、日本の人力飛行機業界の人が集まってマークドレラ先生を囲もうという会だった。

実際は東北大Windnauntsや金沢工業大学夢工房、早稲田大学WASAやうち(Meister)の英語で30分程度の発表・質問などの後、懇親会を行った。

Meisterからは現役が英語発表するのは荷が重いということで、OBになって久しい自分が発表を行った。

人力飛行機の設計方法やMeisterではこうやって作っていますよということの紹介をした。

自分の中では神と崇めている設計者の前で設計方法のプレゼンをするなんて恥ずかしいと思いながら、現実は英語ができなさ過ぎて会話にならなかった笑

ドレラ先生に聞いた話

フェアリングの空気の入出流の考え方や主翼と胴体のつなげ方の話なんかを聞いて面白かった。

フェアリングの話はここに追記しておいた。

プロペラはどこの位置がいいのかって話ではどこでもそんなに変わらないのではないかとか、あと、ウィングレットの効果が中央部の曲げモーメントを変えなかったときに揚力分布から考えて誘導抗力が下がるなんて話とかとか、、、なんか色々聞いた気がするけど自分の中の英雄と会っているということで緊張してしまってだいぶ忘れてしまった笑

聞きたいことはたくさんあったけどあんまり聞けなかった。自分はもう人力飛行機作ることもなく、ファンとして見るぐらいだからまぁいいかとか思って見ていた。

発表内容

(英語が変なことは置いておいて)

大したこと発表してないんだけど、人力飛行機の設計では全体の要求があって空力設計の柱と強度設計の柱があって、それを両方で最適化しなければならないという話がメインだった。

空力設計は揚力線理論とか色々あって、それで計算してやる。強度設計は破壊強度を調べるのが肝心で、そこから運用方法を考えて安全率とか決めてやるとあとは複合材料の材料力学みたいな話があって計算できる。その空力・強度の設計時に、使用を広めているXFLR5などの翼型解析ソフト(元はドレラ先生開発のXFOIL!!)を使ってもろもろの値だったり、桁を通すための太さがあるのかの確認をする。

そして、両方の柱の最適化(どちらかだけでは意味が無い!)を行なってフィードバックを繰り返しつつ、要求を見直しつつ最適化をかけてやる。

人力飛行機はパイロットの低出力側への要求は強いので、軽量で抗力の低いものが必要になってくる。なので最適化みたいなことが必要になってくる。そんななか、強度設計の方にも翼型は関係してくるし、空力最適と構造最適の単独ではなく、両方合わせた最適値に設計しましょう。

みたいなわかってる人には十二分にわかっている話だった。

もう少し具体的に書くと、揚力分布を空力最適な楕円分布に近づけるよりは曲げモーメントの減少を狙って中央部分に多めの揚力、翼端側では少なめの揚力にすると良い。ただし慣性モーメントとか揚力分布が変わってきて運動性が変わってきて、それの影響は別で評価する必要がある。あとフライングワイヤーを付けている機体だと強度(安全率)より剛性部分がボトルネックになりがちなので剛性部分の剛性確保の工夫で最適化する必要がある。

あとはMeisterの人力飛行機の作り方だけどそれはサークルホームページの方が詳しいからここではパス。

まとめ

ドレラ先生と会えて話せるだなんて嬉しすぎて舞い上がって会話にならなかった。ドレラ先生は日本の鳥人間コンテストを興味を持ってちゃんとチェックしているようで嬉しかった。

話は(英語だから全部は聞き取れていないけど)理路整然としていて話の組み立て方だけで頭の良さがわかるほどだった。

自分の中の英雄は会ってみても英雄のままだった。

能代宇宙イベント2011の思い出その2 UNISTAR打ち上げ編

8月のことを11月の今更書くのはちょっと恥ずかしいけど、今年の活動をまとめる時期かなぁと思って書いてみる。

能代宇宙イベントの中でUNISEC(大学で宇宙系のことをやってる団体の集まり)のプロジェクトとしてUNISTAR(ユニスター)というものがあった。

途中からだけど参加して良い経験を得られた。

UNISTARの目的

http://unisonspace.blogspot.com/2011/10/unistarproject.html

に書いてあるんだけど、

  • 学生ロケット団体間の技術交流
  • 缶サットとロケットの交流
  • テクノロジートランスファー

の3本柱。大学生でロケット作っている団体って両手に収まるぐらいはある。各地の学生ロケット団体が方針が違う・日数が少ない・自分たちのプロジェクトと同時並行・技術力()が違う、ということを乗り越えて1つのロケットを作り上げる!っていう熱いプロジェクトだった。

自分は当初は関わる予定はなく、サークルの後輩に参加させて他のところの技術なりプロジェクト運営方法なりを盗んできて欲しいなぁと緩く考えていた。

計画と製作

当初の予定では2機製作し、4発打ち上げる予定だった。

ペイロードにはΦ150の缶サットが入るように設計されていた。能代で打ち上がるものしてはちょっと大きめのサイズ。

これはARLISSというアメリカの砂漠でロケットを打ち上げてそのペイロードで各種競技をすることが「日本で」できるようにみたいな意図があった。

比較的大きなペイロードを積む割に、能代宇宙イベントでは限界の400mまで上げて、かつエンジンをロケット団体でよく使われているHyperTEK社のものを使うということとなった。これによってかなり厳しい軽量化要求があった。

そんな中、経験値の高い設計者の力や東海大の技術によって、すごく良い物が作れていた。(自分は何もしてない笑)

写真はダミーのペイロードを載せているところと分離開放機構部分。

1発目の失敗

8月22日UNISTAR1機目打ち上げ。この機体のペイロードはダミーのものだった。この打ち上げに成功すれば次の打ち上げで東工大松永研の缶サットを搭載する予定だった。

綺麗に打ち上げるものの、上昇途中で分離機構によって分離されるはずの部分(フェアリング)が外れるトラブルが起こった。しかもロケットのパラシュートと缶サットのパラシュートが絡まってしまった。

パラシュートは開いているものの落下ですぐには修復できない程度まで壊れてしまった。

すぐに原因究明されて、分離機構の不具合と軽量化しすぎのためにフィンの剛性不足だとわかった。

2機目の改造

その日夜の代表者会議でUNISTARプロジェクトをこれで手打ちにするか、どうかが議論された。

自分たちのチームは前日までに打ち上げが終わっていたが、他のところはこの後自分たちの打ち上げがあって人手が出せないこと、すぐに改修するのは大変だろうということで2機目の打ち上げを中止するかっ!という話しになった。

ここまで自分は参加もせずにぼんやり聞いていただけだったが中止にするにはあまりにも勿体無いものだと思っていたので、改修は任せてもらって2機目を打ち上げようと提案した。

みんな打ち上げたいという思いはあったので2機目も打ち上げることになった。

次の打ち上げまでは丸2日しかなく動ける人も少なかったので自分も本格的に動いた。2機目打ち上げを決めた次の瞬間には改造案を元に、近くのホームセンターが閉まるギリギリで駆け込んだぐらいだった。

2日間の真夜中まで続く作業でなんとか改良ができた。

具体的にはフィンの部分をホームセンターのスチール棚のから切り出して作った。それに金属部品修理用のエポキシパテをつかってフィンの剛性を上げた。

2機目打ち上げ

小雨の中、各大学の担当が気合をいれて準備が進められ2機目の打ち上げの準備がされた。

打ち上げ前がみんなの緊張感と盛り上がりが最高に達していた。

これ以上ないってぐらいの美しい打ち上げだった。まっすぐキレイに飛んでいった。

きちんと頂点でパラシュートがひらいて缶サットもまっすぐ降りてきた。

高くまで上がったのにランチャーのすぐ脇に降りてきた。

まとめ

打ち上げは完璧に成功だった。技術交流もかなり達成されて、すごく良いプロジェクトだった。目的の1つである缶サットとの交流はこの場所では出来なかったが、このあと缶サットを載せつつもりだった東工大松永研のプロジェクトチームがうちのチームに合流することになったことを考えると、もう1つ目的は果たせたのかと思う。

途中参加で美味しいところを持って行ってしまった感じになったが、みんなで1つのものを作って成功させる。それもかなり困難がある中、次に繋がる可能性のあるプロジェクトに参加できたことはとても良かった。